第2回アドボカシーカフェ 4.28(土) 子どもを守るための予防原則 (報告)

4/28 はご来場いただき、また応援いただき、まことにありがとうございました。

黒田洋一郎氏(元東京都神経科学総合研究所)

66 年東京大学農学部農芸化学科卒業後、東京大学応用微生物学研究所(現・分子細胞生物学研究所)
を経て、ロンドン大学精神医学研究所に留学。73 年東京都神経科学総合研究所入所、のち参事研究員、
03 年客員研究員。医学博士。99-05 年定年をまたいで、科学技術振興機構(CREST)の「環境化学物質
と脳の発達障害」プロジェクトの研究代表者。11年環境脳神経科学情報センター設立。
著書に『脳と神経の科学』(共著、オーム社)、『アルツハイマー病』(岩波新書)など

大竹千代子氏(化学物質と予防原則の会代表)

国立医薬品食品衛生研究所勤務時の98 年、「環境ホルモン調査」のためデンマーク・スウェーデン
を訪れ、予防原則に出会う。当時、すでにプラスチックの可塑剤、洗浄剤の規制が予防原則に基づいて
行われていた。2000 年、EU で予防原則の法律が採択。これを日本へ紹介し始める。以後、講演、執筆多数。
02 年HP「化学物質と予防原則の会」を立ち上げる。同年、予防原則普及のため東京農工大学で博士号を
取得し、研究所を退職。05 年合同出版から『予防原則』出版。

◆ ゲストのお話

・大竹千代子さんから

 大竹さんからは、ネオ二コチノイドを予防原則の視点で考えるというテーマで、欧米における予防原則適用の指針と日本における現状をお話しいただきました。

『1992年リオデジャネイロで開かれた国連環境開発会議において、「環境と開発に関するリオ宣言」が採択され、日本もこれに批准しました。この第15原則は「予防的取組方法は、環境を保護するため、各国の能力に応じて広く適用されなければならない。深刻な、あるいは不可逆的な危害の脅威のある場合には完全な科学的確実性の欠如を理由に、環境悪化を防止するための費用対効果の大きな対策を延期してはならない」と記しています。
 
 これはつまり、「因果関係が科学的に確実でない場合や、未だ結論に到達していない場合、脅威の解明はその時点において科学の限界と認め、さらなる時間を科学分析にのみ費やすことなく、必要があれば、社会的、行政的見地から早期に対策を講じるべきである」ということになります。私としては、「潜在的なリスク(脅威)が存在するというしかるべき理由があり、しかしまだ充分に科学的にその証拠や因果関係が提示されない段階であっても、そのリスクを評価して予防的に対策を探ること」を予防原則の定義としています。
 
具体的には、以下のようになります。
・専門家による厳密な測定や調査が行われるまでもなく、人や自然環境・家畜・ペットなどの「リスクの兆し」があった場合(水俣病ほか)
・労働者の間で発生した有害物質による疾病や危害があった場合(アスベスト被害ほか)
・新種のリスクこそ、情報の不足と経験がないため、予防原則適用の対象候補となる(低周波ほか)
 
 欧州の環境保護は予防原則に基づいています。ヨーロッパでは環境も動物も人間も一緒に保護するという考え方が昔からあり、特にスウェーデンでは、化学物質に関する法律はかなり前からあって、環境のために自分たちが何かを行うことは誇りである、という風に考えています。

 日本でも、2006年第三次環境基本計画の策定の際、「科学的知見は常に進化するものである一方、常に一定の不確実性を有することは否定できない。しかしながら不確実性を有することを理由として対策をとらない場合に、問題が発生した段階で生じるコストが非常に大きくなる問題や、地球温暖化問題のように一度生ずると取り返しがつかず、将来世代に及ぶ影響をもたらす可能性がある問題についても取り組みが求められている。そのため、必要に応じてどの程度の不確実性があるのかも含めてそれぞれに時点において得られる最大限の情報を基にした予防的方策を講じる必要がある」としながらも、これは法律ではないので、規制力もなく、実行されたことを聞いたことがありません。
 
 私が考える予防原則適用の指針は以下にあげる2点です。
・予防原則の実施において、可能な限りの完全な科学的な評価から始めること。各段階において科学的不確実性の程度を明らかにすること。
・評価の結果、不確実性が残り、予防原則の手続きが開始されるときは、その方法の選択肢の決定には、すべての関係当事者(ステークホルダー)が参加し、その手続きは可能な限り透明であること。
 
今後、過去の公害が未然に防げなかった教訓を真摯に学び、「小さな兆し」の情報を社会が共有することが求められます。予防原則は、21世紀に必要な法制度です。いかなる分野でも潜在的リスク「小さな兆し」を訴える市民があれば、ステークホルダーが一堂に会し、議論し、調査し、評価し、対策が手遅れにならないように、予防原則が適用できる仕組みを作る義務が、国と地方自治体にあります。』

・黒田洋一郎さんから

 黒田さんからは、脳神経の専門家としての立場から、化学物質が人間の体に与える影響についてお話いただきました。

『これまでに、例えば以下のような社会問題が発生してきました。

・1950年代からの、有機水銀による水俣病、妊婦の汚染による胎児性水俣病
・1970年頃、米国自閉症、注意欠陥多動性障害(ADHD)など発達障害児増加
・1980年頃、日本、PCBなど化学物質公害後も農薬使用量増加
・1990年頃からの、自閉症、注意欠陥多動性障害(ADHD)など発達障害児の増加
 最近では、軽度発達障害の子どもが増えています。その症状は子どもによって以下のように様々です。
・学習障害(LD):読み書き、算数だけ上手く出来ない
・注意欠陥多動性障害(ADHD):注意力散漫で、落ち着きがなく動き回る
・高機能自閉症(アスペルガー症候群):他人とのコミュニケーションが苦手
・文科省の調査で前学童の6.3%(17人に1人)が軽度発達障害ではないか(2002)
・脳の発達の途中で、ある神経回路だけが傷害され、特定の行動だけが上手く出来ない。他は正常
 
軽度発達障害は、個性との連続性があって診断が困難な部分があります。昔は他の子どもと少し違っても、「個性がお強いようで」で済まされていたことが、今では済まされません。アメリカや日本の様に文明化された社会が、障害のもとにもなっているとも言われています。アメリカでも自閉症児が増えていて、環境化学物質が原因ではといわれ始めています。2010年の朝日新聞には、有機リン系農薬を低濃度でも摂取した子どもはADHDになりやすいという記事も掲載されました。
 
なぜ農薬など環境化学物質で発達障害がおこるのかというと、心の働きは全てそれぞれに対応する脳内の神経回路で働き、その神経回路は化学物質(神経伝達物質)で働くからです。脳内で働く化学物質に似た環境化学物質(にせもの)が胎児、乳児の脳に入ると、神経回路に異常をきたし、異常の起こった神経回路の担う行動だけ、障害がおこります。
 
また、胎児・乳児の脳は発達中なので化学物質に弱く、血液脳関門も未発達なので脳内に入りやすいのです。水俣病では、お母さんが水銀を摂取して胎児が脳に重篤な障害がでました。このことによって、大人の脳と違って、赤ん坊の脳には毒性を遮る機能がないことが分かりました。
 
ネオニコチノイド系農薬は、発達障害の原因とされる有機リン農薬と置き換えられつつありますが、より直接に脳の発達を傷害する可能性が高いものです。もともと農薬の安全性試験は不十分で、脳の発達への安全性は全く確かめられていませんし、食品などからの内部被曝なので、摂取量が分かりにくく、傷害が起こっても因果関係が立証しにくいことも問題です。
 
農水省、農薬会社、農協の癒着で、安全性の問題点が隠蔽されやすい状況もあります。そして何よりも、農薬はもともと第二次世界大戦の神経毒ガスの“平和利用”という名のものとに利用され始めたものです。
 
レイチェル・カーソンの「沈黙の春」にあるように、環境汚染は、まず自然界に作用し、それから人間に作用する。だから自然界の観察は必要です。実験して結果が出てくるまでには、10年程度かかります。そして結果が出てからでは手遅れになるでしょう。その前に予防原則で対応していくことが、今後重要だと思います。』

◆ 映像アーカイブ
映像アーカイブを以下にあげました。
ご覧ください。


大竹千代子さんのプレゼン(抜粋)


黒田洋一郎さんのプレゼン(抜粋)

 
◆ ママたちも参加しました。

 
詳細はこちらをご覧ください。

 
◆ アンケート結果

感想

大竹さんのお話から、いろいろな分野でEUの基準が厳しくできるのはどうしてかとかねてから思っていましたが、科学は完全ではない。ヒトも生物も守っていきたいという根底の考え方が基になっていることを聞き、少しは納得しました。いつも思うのですが放射能も遺伝子組み換えも人間の人智が自然を超えられるという様な傲慢があることだと思っています。人は畏れをもって、生きるべきということの大切さを改めて思いました。変えていくには、小さな行政の単位ぐらいから。農薬会社を相手にするより農家、生産者一人ずつから。マスメディアを良い方向に育てるにはダメな部分をたたくのでなく1%の良い部分を褒めて、それを伸ばしていくこと。それらの事が印象に残りました。

睡眠不足で参加し、難しいところはよくわからなかった面も多々ありましたが、ハッとする気づきをいくつも与えられました。

専門的な所もありましたが、大変分かりやすく、良い話だったと思います。

3人のママさんが発してくださった声が本当に貴重だったと思います。「~すべき」「~をやめよう」だけでは見えなくなる、聞こえなくなる、一人一人の自分の声を発する場が、本当に必要だと思います。その上で、本質を話し合っていけたらと思います。

新しい市民の安全のための原則「予防原則」勉強になりました。どう運動化、深化させてゆけるか考えたい。行動してゆかねば。

とても勉強になりました。ありがとうございました。

1回目に参加していなかったので、チト入りにくい面はありました。

ネオニコ農薬の神経に及ぼす作用の恐ろしさを学び、多くの生産者もこの事を知って使用しているのでしょうか?消費者は農薬を散布した野菜と知って購入しているのでしょうか?やはり、農薬はなるべく使用しない土作り、野菜等作りができるよう消費者力を高め、虫食い、不揃いの野菜を利用する必要性を感じました。

・4時間、意外とあっという間でした。・2名のスピーカーから別の観点から話を聞けたのはとても良いと思いました。・4時間の中でしっかりした解決策まで導くのはとても無理だろう。4時間の中で出来ることとしては充分ではないかと思った次第。

・予防原則の考え方がよかった。・黒田さんの話が分かりやすかった。

ただ今妊娠中なので、ADHDなどのお話を聞くと増々心配になりました。いろんな人と話をするとすべての事柄にあてはまるのですね。

 

今後に向けた意見

ぜひ、農薬メーカー、農業生産者(慣行農法をやっている人)の話を聞く場を作って欲しい。

もっと多くの人に知ってもらいたいと思います。

次回以降も参加したいと思います。

結局、自分たちのエコフットをし、0に減らさないと何も解決しないのでは?と。

本日はありがとうございました。素晴らしい勉強会でした。

最後に農協が出ましたが、農協からみたネオニコも聞きたいです。

■ 開催情報 
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ねねね、ネオニコチノイドってなあに?
-新農薬ネオニコチノイドについて“未来に向けたみんなの意見”づくり大公開-

世界中でミツバチの大量死や大量失踪が報告されています。日本でもここ数年、国内でのミツバチの大量死・大量失踪が報道されるようになりました。1980 年代から、安全な農薬という触れ込みで有機リン系農薬に代わってネオニコチノイド系農薬が世界的に使用されるようになり、それと同時期にミツバチが激減しました。
 
そのような状況の中、フランスでは1999 年に予防原則を適用してあるネオニコチノイド系殺虫剤の使用一時停止、2006 年には最高裁で正式に使用禁止。そして2018 年までに農薬使用量の半減を目標に設定しています。イギリス、ドイツ、イタリア、アメリカなどでもネオニコチノイド系農薬の使用禁止や、自主規制の動きが活発化しました。
 
まだ、ミツバチの大量死や大量失踪の原因がネオニコチノイド系農薬と断定されたわけではありませんし、人体に影響がないということが証明されたわけでもありません。“予防原則”という視点から海外で自主的な規制の動きが始まっている中、私たちはこの問題を感情論ではなく科学的な知識に基づいて考え、今後の方向性を探っていくことが求められているのではないでしょうか。
 
「人体には影響ない」といわれるネオニコチノイドの神経毒性が、人間とくに発達期の胎児や乳幼児に被害をもたらす可能性について研究の最前線から学び、子どもたちに向けた予防原則という視点でこの問題を考えます。
 
 
第2回テーマ 「子どもを守るための予防原則」 (事前申込制 定員30 人)
日時:4月28日(土) 14:00 ~18:00
場所:新宿区歌舞伎町2-19-13 ASK ビル4F 会議室
資料代:500 円
 
主催:
認定NPO 法人まちぽっと, 国際環境NGO A SEED JAPAN, 一般社団法人act beyond trust,

お問合せ:
特定非営利活動法人NPOまちぽっと
〒160-0021
新宿区歌舞伎町2-19-13 ASKビル5F
E-mail: info@machi-pot.org
Tel:03-5941-7948
Fax:03-3200-9250


 

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